The Black Keys:1stアルバム「the big come up」レビュー
寒くなったり、暖かくなったり、初春は気候も大忙し。
どうもリョウスケです。
今回は以前ご紹介した、the black keysの1st アルバム「the big come up」のレビューをしたいと思います。
2002年に発表されたこのアルバム、ほとんどの曲がヴォーカル、ギター、ドラムのみの演奏。しかしながら、音に厚みがあり、音そのものの歪み感が、うまい具合に音のレンジを出しています。(ヴォーカルギターのダンは、フィンガーピッキングで低音と高音の使い分けをしています)
また、このアルバムの構成として、カバー曲が多いことや、1曲の長さが短い(最大でも3:11)のも特徴的です。60年代を意識しているのか、こだわりが感じられますね。
このアルバム、CDとvinyl(レコード)版とで、曲順が違いますね。自分はこのアルバムに関しては、レコードで聴くことをオススメしますので、レコードの曲順でレビューしたいと思います。
「the big come up」
side A
1. Busted
ド頭一曲目!ブルース感バリバリです。この曲は一応、R.L. Burnsideというブルースシンガーの"skinny woman"が元となっている、いわゆるカバー曲ですね。曲名が違っているのは、歌詞をガラッと変えているからですね(著作権とかどうなってるんだ?)。メインリフは原曲ママですね。
2. Do the Rump
2曲目も渋くかっこいい曲を持ってきていますね。こちらもJunior Kimbroughというブルースシンガーのカバー曲です。ド頭の"Hey now baby~"が印象的で、リズムが重く、軍隊で山を登るようなズシンズシンという地響きにも感じるようなリズム感ですね。ヴォーカルの合間に、ギターも歌ってるかのようなリードメロディーのオンパレードです。
3. I'll be your man
最初、自分はライブ映像を見てから好きになった曲です。音源ではマラカスのシャカシャカ音が軽快感を生み出しています。また、ギターのこの詰まったような音が心地よさを醸し出していますね。3曲目にして、はじめてのオリジナル楽曲です。
4. countdown
珍しくベースが入っていて、ギターもそれなりにオーバーダブされていますね。この曲はとても展開がなだらかなで、ブルースのような楽曲。イントロのパトリックの軽快なスネアが印象的ですね。
5. the breakes
もうギターがノイジー。冒頭部はパトリックのドラムビートとアナウンスが入るラジオ風なはじまり。そこからいきなりダンのノイジーなギター音でぶち壊す!随所に出るギターのチョーキングがかっこいいです。マネしたいけど絶対にこんな音出せない笑。ダンのギターサウンドは、生々しくて、個性の塊ですよね。
6. run me down
side Aの中では落ち着いた印象の曲。サウンドメイクで少しハイを削っているのでしょうか。曲の終わりのほうのリズムの崩し感とか、一発録りの雰囲気があって好きです。CD音源だけど、ライブ感があるというか。ラフさがたまらんです。
7. she said, she said
最初はびっくりしました。なんてったって、さらっとビートルズのカバーが入っているものですからね。これは自分の大好きなアルバム「revolver」に収録されているもので、そのまま歌えば、ビートルズの印象から抜けられないのですが、この2人のアレンジは、アルバムにぽつんと入ってても気づかないくらい(いい意味で)、オリジナルを自分たちなりに昇華した曲に仕上がっていますね。
side B
8. heavy soul
裏面 side Bの一発目は荒々しいギターフレーズとドラムのドン、ドンというリズムが合わさった楽曲。途中の「heavy soul!」という掛け声からツッコミ気味で演奏されているので自分的にテンションがあがります。この曲は珍しくオーバーダブされたギターソロが入っていますね。ノイジーでかっこいいです。
9. yearnin
ライブで演奏しているかのようなテンポの速さ。1分すぎたあたりにちょっとした間奏があるのですが、そこでギターのフレーズを左右のチャンネルで切り替えています。歯切れが少し雑なので遊び心でやっているのかなと自分は思いますね笑。
10. no fun
みなさんおなじみのThe stoogesのカバーです。ギターの音がすごく厚く、聴いていて心地良いです。間奏もトレモロを使用し、コードをかき鳴らしていて、リスナーを飽きさせません。2分半ちょっとという短い時間でこのようなアレンジに仕上げるところもまた才能なんでしょうね(原曲は5分以上あります)。ちなみにこの曲はレコード版のみの収録です。聴きたい方はレコードを買いましょう笑。
11. them eyes
最初にトレモロをかけたギターのメロウなフレーズで始まるこの曲、次の瞬間からはパンクのような勢いのあるフレーズに移り変わります。途中からラジオボイスを取り入れたり、緩急のある展開が印象的。個人的にB面でおすすめの楽曲です。このアルバムの中ではかなりポップな部類に入ると思います。
12. leavin' trunk
こちらもブルースのスタンダード曲。イントロのギターフレーズや、サウンド面では、このアルバムにしてはかなり丁寧に演奏されている印象がありますね。何か思い入れがあるのでしょうか。もともとはSleepy John Estesという方が作曲したそうですが、詳しいことは調べられていません。Taj Mahalのカバーが有名ですね。
13. blooklyn bound
珍しくベースがかなり目立っている楽曲。ギターが自由に弾いている裏で、ベースがイントロのメロディーを延々と弾き続けています。展開もあまりなく、シンプルな構成でまとめられています。
14. 240 years before your time
最後、トリを飾るのは今までの曲と違って、すごくサイケ感があります。Led ZeppelinのJimmy pageがテルミンを使っている情景を連想させています。最後だし、少し自由にやりたい気持ちがあったのでしょうか。海外の人って、メロディーというより、この曲のような"雰囲気作り"がうまいですよね(アンビエントミュージックしかり)。正直憧れます。
最後に...
このアルバムは個人的に、曲単位で聴くというよりアルバム全体で聴く方がいいと思います。まとまり感があって、このThe Black Keysがどんな曲が好きで、何を目指しているのか、というものが伝わってくるように感じました。全体の雰囲気がすごくレトロで生々しいギターの音などが心地よいです。昨今の時代的に、原点回帰的な風潮もあるのでそれにマッチした形で、人気が出たのかと思います(このアルバムを出したのはもう18年も前のことなのですが笑)。デジタルな音が主流な世の中で、あえてアナログなサウンドで勝負する精神が、ロックであり、世のロックバンドは見習うべき存在なのかもしれません。